私、後輩くんと出会う


†Case3:私、後輩君と出会う†




ブン太とファミレスに寄った次の日、私は物凄く後悔した。


『た、体重が0.5キロ増えた…!!』


珍しくブン太が奢ってくれたのと、目の前でブン太がばくばく食べるから油断してたんだ!


「0.5キロってあんた…。元から細いんだから全然大丈夫でしょ」


机の上にだらけながら嘆いていると、友達のあやちゃんが私を慰めてくれる。


『0.5キロは大きいって!運動…は疲れるからダメ。はあ……。今日のおやつは我慢しよう』


私も女の子なわけで、体重とか気にする。


今日の分のおやつは全部ブン太にあげることにしよう。


「お、じゃあ私にそのおやつ分けてよ。あんたの作るお菓子って美味しいのよね。あ、もちろん丸井君に渡す分の残りでいいわよ」


『はいはい。元からあやちゃんの分はあるよー』


「マジ?さっすが名前!」


手作りのカップケーキを友達のあやちゃんに手渡す。


にこにこと笑うあやちゃんは綺麗系の女の子で、性格もさばさばしていて親しみやすい。


ただし、あやちゃんは好き嫌いが激しいことと、イケメンに騒ぐ女の子達が嫌いという理由で誤解されやすいけど、根は頼れるお姉さんって感じ。


あ、イケメンに騒ぐ女の子ってよりはうるさい子が嫌いって言ったほうが正しいかも。


††††††††††


「おはようさん。今日はカップケーキなんか」


あやちゃんと話していると、仁王君が私達の会話に入ってきた。


現在、私の隣の席なこともあってファンクラブ達からは特にお咎めはないため気軽に話す。


『おはよう、仁王君。仁王君もよかったら食べる?』


「なんじゃ、お前さんは食べんのか?」


『太ったから今日は食べないのー』


むすっとしながらそう言えば、仁王君は喉を鳴らして笑った。


「じゃあ、一つ貰っておこうかの」


つん、と膨れたほっぺたを刺される。


あやちゃんがニヤニヤしながら見てたのと、クラスの女子から睨まれたのなんか私は見てないぞ。


刺されたほっぺたを抑えていると、不意にブン太がこっちに来た。


学校では幼なじみだってこと言ってないし、席も離れてるからほとんど話さないのに。


首を傾げてブン太を見ていると、ブン太が不機嫌そうな顔で私の腕を掴んだ。


「あら、丸井君」


「なんじゃ、ブンちゃん」


あやちゃんと仁王君がブン太を見てニヤニヤと笑う。


今更何だけど、あやちゃんと仁王君って似てる気がする…。


「…名字借りてくから」


学校での呼び方にぴくりと反応する私。


やっぱり、ブン太に苗字で呼ばれるのは慣れない。


††††††††††


連れて来られたのは校舎裏。


くるりと向き合ったブン太は、低い声を出した。


「仁王のこと好きなのかよ」


いつから教室に来て見ていたのかは知らないが、この口ぶりから誤解していることだけは分かる。


「お前が仁王のこと本気で好きだってんなら俺も応援する。だけど、」


『ちょっと待って。私がいつ仁王君のこと好きだって言ったの』


一方的に話すブン太を止める。


周りに誰も人がいないことを確認すると、再びブン太と向き合った。


はあ、と息をついて口を開く。


『まずブン太も知ってるだろうけど、私の恋愛対象はイケメン幽霊。だから仁王君が幽霊なら対象になってたかもだけど、仁王君は生きてる。その時点でない。だから私が仁王君のこと好きっていうそれは誤解なの』


ノンブレスで言い切る。


確かに仁王君はイケメンの部類に入ると思う。


それはブン太も同じだと思うし、誰もが認めている。


だけど私は生身の人間より幽霊に恋愛対象が向いているため、たとえイケメンだろうと生きているその時点で私の恋愛対象外になるのだ。


「そっか…。そうだよな。ならいいんだ」


私の答えを聞いていつも通りに戻ったブン太。


††††††††††


教室に帰ろうと私が踵を反すと、誰かの叫び声が近くから聞こえた。


「今の声、もしかして赤也?」


私が声に向かって走り出すと、ブン太もついて来る。


…私、運動オンチだった。


そう思ったと同時に自分の足に自分の足を引っかけ、ぐらりと上半身が傾いた。


痛みに備えてぎゅっと目を閉じると、不意にあたたかい温もりに包まれる。


「行くぞ!」


ブン太が支えてくれたようで、私は無傷で済んだ。


足の遅い私を気遣うようにして走り、やっとのことで着いた。


「赤也!!」


「ま、丸井先輩…!」


くせ毛の黒髪の後輩だろうか?


ブン太の知り合いらしく、ブン太を見るとほっとしたような顔をした。


「きいぃいっ!」


甲高い叫び声とともに、赤也君もうわっ、と叫ぶ。


赤也君の目の前には生首が血をぼたぼたと滴らせながら動いていた。


普通、幽霊や妖怪や悪魔などは見えないはずなんだけど、どうやら赤也君には見えるらしい。


私はそんなことを頭の片隅で思いながら、生首の髪を掴みあげる。


噛み付こうとしてくる生首は、私が触れただけじゃ消えないようだ。


『あー、もう。大人しくして』


パシ、とスカートから出した血の付いた扇子で生首を叩くと、さらさらと砂になって消える。


『除霊完了、と』


扇子をスカートのポケットに再び直して、赤也君に向き直る。


赤也君に何て今の出来事を説明しようか。


『私、ブン太の幼なじみの名字 名前って言います』


とりあえず、状況についていけていない赤也君に自己紹介をする。


ブン太はそんな様子を苦笑いを浮かべながら見ていた。




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